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花ちゃんとの出会い③

今日はいよいよ2階に上がる日。

「こんにちは」

そう言いながら玄関ドアを開けた後
2階にいる花ちゃんに向かって


「花ちゃん、こんにちは。
 今から花ちゃんの部屋に行くね」


と、話しかけながら階段を登った。

『花ちゃん、来たよ』

花ちゃんに聞こえるように
花ちゃんが心の準備ができるように
一段一段花ちゃんに近づいていった。

お母さんから花ちゃんの部屋の位置を聞いていたので
この部屋だ!花ちゃんとついにご対面の時がきた。


「花ちゃん、ドア開けるね」


と言いながらドアノブに手をかけた。


これでカギをかけられていたら「花ちゃんはまだ私に会いたくないんだな』って受け止めようって思っていた。


ドアノブをまわすと 『ん?動く』『開く』「開いた』

「花ちゃん」

あれ?
部屋は網戸からのそよ風にカーテンが揺れているだけの部屋で
花ちゃんはそこにはいなかった。


やっぱりはなちゃんはまだ私に会いたくないんだな、ってことがわかった。


「花ちゃん、いないね。じゃここで5分間だけ話をして帰るね」

と咄嗟に言って
2階のどこかで聞いていると思える花ちゃんに向かって話し出した。

今日の天気のこと
季節のこと
好きな食べ物のこと

花ちゃんに話しかけるように話した。
腕時計を見ながら一方的な話の5分間はひたすら長く感じた。

「花ちゃん、5分経ったので帰るね。また来週ね」

と言って
階段を降りてお母さんに挨拶をして帰った。

さて、この5分間スピーチは、果たしていつまで続くのでしょうか。


花ちゃんはきっと聞いてくれている。
花ちゃんはどんな話に興味があるのだろう。
見えない花ちゃんの心に届いているかな。
花ちゃんはひとりじゃないよ、って。

5分間スピーチは、聞いている花ちゃんにとっても、話をしている私にとっても
そう、ふたりにとって
無理なく 程よく なんとなく一緒にいる感が 感じられる5分間であると信じて
来週も再来週も
そう1ヶ月間続けたのだった。


To be continued 

ーMISAー